「胸が張り裂けそうだよ」

2022年2月
「胸が張り裂けそうだよ」
仮住まいへ引っ越し作業をしている中で、何度も母が私に言った言葉。
その頃実家の立退きについて、母の望むように新居へ引っ越しするようにするからと約束して説得したのに、できなかった。2-3か月の立退き期日の延期についての交渉が決裂してから、1ヵ月あまりは母に嘘つきと言われた。
母に引っ越し作業中に車で移動している時
『週2日は、かーみぃじーに散歩に連れてくるから。』
と話した。母は、
『ぜったいに嫌だね。家が壊されているのを見るなんて、胸が張り裂けそうだよ』
本気ですか?お母さん。
ご近所友達に会いたくないんですか?
私は、そんな母の目線で考えてなく、知り合いもいないアパートのベランダからの眺めは、バイパス道路。
交通量が多い為散歩をさせることもできないから、仮住まい期間中は馴染みのご近所がいるところに連れていくことが、母のストレス軽減につながると思っていた浅はかさに、涙が落ちた。
引っ越し前夜、相方と庭で最後のBBQをした。新しい地では庭で焚火はできない。
パチパチ揺らぐ炎を眺めながら、無事新居へ移動できることを願った夜だった。
※かーみぃじぃは、50年近く住んだ家の前の海岸。

母とのデート習慣
2022年夏。
引っ越しをしてしばらくは、母のご機嫌は良くなる気配はなかった。
けれど、模合には行ってくれた。
沖縄に昔からある集まりのことを模合(もあい)と言う。
月に1回、友だち同士で食事をしながら、積み立てをしている感覚で、まとまったお金は、その月に必要な人が「ありがとね~」
なんて言いながら順番に受けとります。
もともとは助け合いの仕組みですが、参加する皆が一番楽しみにしているのは、会っておしゃべりをすること。
壊され更地になった家の跡には、近づかないけど、お友達には会いたがってくれた。
それから、徐々に、ガチガチになった張り裂ける寸前の心は柔らかくなっていき、
家の跡。見に行ってみよう。
と言ってくれた。
張り裂けそうな痛みも時間が治してくれた。
家の跡地を訪れた時は、静かに歩き回っていた。
何にも残っていないんだね。
庭の植物は、できる限り新しい庭に植え替えているよ。
お母さんが来たいと思った時には、連れてくるよ。約束だからね。
それから、まだ歩ける間は、かーみぃじーを散歩した後馴染みのカフェでおしゃべりするのが母との定番のデートだった。
高齢になってからの住居環境を変えることは、ほんとうに大変だと痛感した。
甘えられる家族がいるなら、この時の私達家族のように時間が解決してくれる。
もし、高齢になって一人で引っ越しだったらと考えると、寂しさで母のように胸が張り裂けるかもしれない。
母との定番のデートコースは、
一緒に美容室
通院の帰りにご褒美の外食
ショッピングセンターでお洋服を選ぶ
行く先のないドライブ


最後までお読みいただきありがとうございました。
笑ってもらえたなら本望です。
このカテゴリーでは、家族介護について思いつくままに書いて、
思考の整理整頓しながらストレス発散します(笑)
出来事に嘘はありませんが、そのまま書くと辛いだけなので、
その時は苛ついてしまっても、母へありがとうの気持ちと私の家族も読まれる皆様も笑顔になれるように書いています。考え方を変えて感謝の気持ちをもつことで、幸福度も自ずとアップし、ポジティブな思考で過ごす行雲流水の日々です。